天使の涙(仮)


テーブルに置かれていた貴弘の腕が一気に横に振り払われた。
腕の横に置かれていたグラスがテレビ台にぶつかり、大きな音をたてて割れた。

その音に一瞬ビクッとなったが、すぐに下を向いたままの貴弘を睨み付けた。

「………物にあたるなんて、最悪。」

ソファーから立ち上がり、雑巾と掃除機を持って来てそれを片付けながら言った。

「もう帰って。」

「………俺は……まだ何もお前に話してない…。」

聞取りにくかったが確かに彼はそう言った。とても力のない声で。

< 40 / 181 >

この作品をシェア

pagetop