天使の涙(仮)
時刻は6時を回っていた。
パートの石田さんに、仕事を引き継ぎしてそそくさと更衣室に向った。
帰る準備を整えて、従業員用の入口から出た。
空は綺麗なオレンジで東側は少し濃いブルーになっていた。
「誘っておいて待たせるの?」
不満げな顔の実々が入口のすぐ横の壁にもたれ掛かっていた。
「ごめん。」
その言葉を無視するかのように、一人で歩き出してしまった。
それを追いかけるように俺も歩いた。
「どこ行くの?」
「………う~ん、……どこがいい?」
誘っておいて行く店さえも決めていなかった。
そんな俺に呆れ顔で“焼き鳥”と言った。
その一言で、いつも二人で飲みに行く居酒屋に決定した。