天使の涙(仮)
翌日、目を覚ました実々はいつも通りだった。
昨日のことにはお互い何も触れず、挨拶を交わす。
俺より出勤の早い実々はいそいそと仕事に行く準備をしていた。
俺は案の定、昨日無理矢理飲まされた冷酒のせいで二日酔いとはいかないものの体が鉛のように重かった。
家を出ようとしている実々と一緒に一度家に帰ろうと思った。
するとバッグからゴソゴソと何か取り出した。
そしてそれを俺に手渡して言った。
「ダルいならまだ寝てれば?」
そうそっけなく言って家を出ていってしまった。
手の平のそれを見るとこの部屋の鍵だった。
その実々の気遣いに甘えて、ソファーに寝転んだ。