天使の涙(仮)

昼休みになり、休憩室に行くと、翔と少し早めの昼休みに入っていた加藤が居た。
二人の視線は私に向けられた。
翔はいつもの笑顔で、加藤は“邪魔が入った”と言わんばかりの顔をしている。

「実々、今からお昼?」

私は、自分で働いているこのスーパーの惣菜コーナーで買った海老丼を机に置いた。

「うん。アンタ、来るの早くない?」

翔の出勤は確か1時だったはずだ。
でも今は12時過ぎ。

「ちょっとね…。あっ、これ。ありがと。」

“はい”と言って、今朝渡した鍵を差し出した。
私はそれを受け取ってエプロンのポケットに入れ、海老丼を一口頬張った。

休憩室から出ようとしていた加藤がそれを見逃さなかった。
何を想像したのか信じられないと言った表情でいる。
それは一瞬で、子供が駄々をこねるときのような顔になった。
< 94 / 181 >

この作品をシェア

pagetop