流星☆BOY【移行更新中】
 本を胸に抱きしめながらカラっと扉の乾いた音が響くと、震えそうになりながら少しずつ歩を進める。

 図書室っていうのは、利用者が決まっている。

 あたしもその一人。


 分厚い小説を司書の人に返すと、あたしはまたいつもの本棚に向かった。

 棚の隙間の向こう見える机には、勝手に見慣れた広い肩。

揺れる度に小さな紙ずれの音がするから、いつものように本を読んでいるんだ。


 あたしも適当に見繕って、本の一番後ろにある図書カードをチェックする。

そして、書かれている名前を確認してしまう。


「……川上先輩…」


 スカートのポケットから、そっと1枚の封筒を取り出した。

そこには『川上星彦様』とできるけキレイにと心がけたのに、おかげで歪んで見えるあたしの文字。


「昨日は、渡せなかった…」

 自分の誕生日に、と決意したけれど、やっぱりそれも打ち砕かれて。

結局あたしの手元に未だに納まっている。


 今日こそ、頑張れる?

小心者の自分に問いかけてみるものの、答えは教えてくれなかった。


 今度こそ、と本を握り締めて一歩ずつ広い背中に近づいていく。

震える声を必死に抑えて、大きく深呼吸をした。


「…あ、あの……っ」

 心の準備はまだ足りなかったみたいで、上ずってしまった。

けれどゆっくりと、先輩が振り向いてくれた……。




 ……のに。

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