流星☆BOY【移行更新中】
「あの、…あたし…」

 ようやく紡ぎ出た声は、先をいわずとも先輩は分かってくれたみたいだった。

「とりあえず、見かけたところまで案内するよ」

 導かれるように、愛しかったはずの広い背中についていった。


 バシャン、バシャン。

水がはねる音が断続的に響く。

「ほら、あそこ」

 先輩に示されたのは、昼休みあたしが『願い』をささげた場所だった。

 小さな1本だけの笹が風に揺られている。ただ、そこにはあたしが結んだはずの便箋はどこにもなかった。

 月の光すらも浴びないそこに、虚しくも街灯で浮かび上がるのは黒い人影。

だけど、水をかきわけるには、体が小さすぎる。


「『大切な人からの預かり物』を落としてしまったらしいよ」


 背中を押すような先輩の言葉に、無性になにかがこみ上げてくる。

ゆっくりと、足が勝手にその影に近づいていた。


 パシャンッ、

「…めてよ…」


 パシャン、パシャンッ、

「…ウセイ…」



 バシャンッ!!


 大きく割れるような水の音が響いて、辺りは虫の声が鳴り渡る。

静かにピチャン…と滴り、その重みを吸い取るようにあたしは腕に力を込めた。


「リュウセイっ、もう、いいから……っ」


 小さな体で、ひねくれすぎたあたしを受け止めようとしないでよ。

 嬉しくて、嬉しくて、……心が震える。


< 38 / 71 >

この作品をシェア

pagetop