流星☆BOY【移行更新中】
「橘さん!?」

 腰を抜かしたように床に座り込んだあたしを、心配そうに先輩が慌ててかがんできたので、なんとか笑い返す。

「すみません、安心したら気が抜けちゃって……」

 ダイスキだった先輩が、優しく微笑んでくれる。

 昨日までのあたしには考えられないことだ。

あのままだったらこうして普通に話していられるわけなかった。


 あたしの反応に驚きながらも、リュウセイを診てくれた先生はメガネをかけ直す。

「1時間ほどしたら終わりますので、そのころこちらにお寄りください」

 ようやく胸をなでおろし、一礼して診察室を出ると先輩はぽんっとあたしの頭に手を置いた。

「じゃあ、オレはこれで失礼しようかな」

 あたしの気持ちを悟ったように、ただ黙って笑ってくれた。


 静かな二人の足音が、ほとんど人のいない廊下に響く。

 ロビーは真っ暗で正面玄関は閉じられてしまっていたから、裏口まで回ることになった。

「あの、いろいろと、ご迷惑をおかけしました」

 リュウセイのことだけじゃなく、あたしの手紙についても。

あたしのキモチを汲んでくれたのか、大好きだった声が優しく包む。


「いや、実際寄せられる好意ってのは、嬉しいものだし…それは橘さんも分かるでしょう?」

 先輩を見上げると、含みをもたせたように笑ってくる。


「……はい」

 胸の奥がこそばゆくて温かいキモチが広がった。


 何を話すわけでもなく、守衛室の前を通ってすでに闇が広がる外までたどり着く。

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