初恋 ~キミが僕に残したもの~
「向こう(イギリス)に行ってからまともに話してないんだってな。
最後なんだから、お祝いの言葉くらい、直接言って来い」


強制的に新婦の控え室まで連れて行かれ、背中を押される。


僕は小さく溜息をつく。


――できれば話すのは避けたかったんだけどな。


話したいと思わないわけではなかった。


話ならいくらでもある。
今日は話したくないだけだ。


でも諦めざるをえないようだ。

父が後ろで仁王立ちしていて、逃げられそうにない。
意を決し、木製の大きな扉をノックしてから、その重たい扉を開いた。


「誠ちゃん! 来てくれたのね!」


懐かしい彼女の声が耳に飛び込み、その声に心がざわざわとこすれるような音を立てた。
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