初恋 ~キミが僕に残したもの~
そうだ。
これは最後の機会だ! 
後にも先にもない、今だけしかないのだ! 


好きならそうすればいい。
抱きしめて好きだという、たったそれだけのことだ。


迷うほど時間はないのだ。


しかし……だ。


――そんなこと、できるわけがない!


愚かな考えに蓋をする。

そんなことできる勇気などぼくにはない。
それができるくらいなら、今日という日まで逃げなかっただろう。


僕は言葉の代わりに彼女の肩に手を置いた。
その手から想いが流れ込んでしまわないように、手の震えを悟られないように――触れるか、触れないか、分からないくらい軽く肩に触れた。


白く細い肩と、キレイなうなじが目に飛び込んでくる。


どうしてこの女(ひと)を抱くことが出来ないのだろう。
このまま彼女を引き寄せれば済む話だ。


「好きだ」と伝えてしまえば良い。こんな近くに彼女がいる。



手は届いている――!

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