初恋 ~キミが僕に残したもの~
――でも、彼女が選んだのはぼくじゃない。


再び首をもたげた想いに栓をする。触れた手が熱くなってきて、ゆっくりと離す。



部屋の中を優しく流れる音楽に混じって、一秒、また一秒と時を刻んでいく秒針の音が聞こえた気がした。
その音はやけに大きな音に聞こえ、悲しみの底なしの淵へと叩き落すようにも感じた。


――ダメだ! もう少し、もう少し待ってくれ!


矛盾しているのは分っている。
彼女を避けてきたのに、いざ彼女を失うと分かると、途端に放したくなくなって時間を止めたくなった。


少しでよかった。
自分勝手なのは承知の上で、この独りよがりな願いを聞き届けて欲しかった。


「誠ちゃん?」
彼女が訝しげに僕を見ていた。
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