初恋 ~キミが僕に残したもの~
僕ののどからは手が出ている。


好きだと言いたい! 
僕というこの固体が壊れてしまうほど、彼女のことが好きなのだと伝えたかった。
それなのに、ぼくは彼女の潤んだ瞳に、その憎らしいほど愛しい笑顔に心を挫かれてしまう。


――その笑顔は罪だよ……


僕は彼女からなるべく自然に目をそらした。

それから部屋の隅で父と談話している彼女の両親に披露宴に出られない非礼を詫び、部屋を後にした。


彼女の呼び声に耳を塞ぐ。



もう限界だった。


鼻先をかすめた微かに漂う甘い化粧の香りが心を縛りつけ、ささくれた思い出の破片が胸に突き刺さって、傷だらけだった。
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