初恋 ~キミが僕に残したもの~
彼女を姉のように慕っていた中学生のぼくが横をすり抜けた。


英語が苦手だった僕にその楽しさを教えてくれたのは他でもない彼女だった。


高校の合格発表では一緒に受験番号を見つけて抱き合って喜んだ。
涙でクシャクシャになった彼女の顔を見て、胸がキュッとなったのを今更ながら思い出す。


そして、今度は彼女を異性として完全に意識していた高校生の頃の僕とすれ違う。


彼女が当時付き合っていた男のために作ったお菓子やお弁当の味見を僕はしていた。
砂糖と塩の加減を間違えた、恐ろしく不味い物だって僕は平気な顔をして食べた。

彼女への想いがそうさせていた。
『別れようかな』という喧嘩後のぼやきには、『もう少し頑張れ』と心にもないことを言って励ましていた。


なぜ、いまさらそんなことを思い出す必要があるのだろう。



――もう二度と、そんなふうには過ごせないから……なのか?



掻き消える幻影は答えてはくれない。
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