初恋 ~キミが僕に残したもの~
僕は目の前で小首をかしげるように見つめ続けている彼女を見上げた。

彼女の後ろには大きく青い空が大きな翼を広げている。
そして、薄紅の桜の花びらが一枚、春風に乗り、ぼくたちの間に割り入るようにゆっくりと舞い落ちた。


その瞬間、ぼくは差し出された彼女の手を払いのけ、急いで立ち上がると、逃げるようにその場を後にした。

体中がカッと熱くなっていった。
恥ずかしさで胸は張裂けそうだった。
まぶたの裏に彼女の姿が焼きつき、頭をいくら振っても忘れ去ることが出来なかった。


五つ年上の彼女がぼくの家の隣に越してきたのは十三年前の春、小学一年生の頃の話だ。
ぼくは友達とサッカーをするために家を飛び出して、挨拶にやってきた彼女にぶつかって尻餅をついた。


そのとき彼女がぼくを起こそうと、手を差し伸べてくれた。
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