初恋 ~キミが僕に残したもの~
彼女は突然留学した僕を気遣うように幾度なく連絡をくれた。

それは手紙であったり、メールであったり、時には電話だったりした。


でも、そんな彼女の好意に対して僕がとった行動は誠意の欠片もないものだった。

居留守を使うこともあった。
手紙やメールは読んではいたが返事は出さなかった。


彼女の声を聞けば、すぐにでも会いたくなる。
返事を書こうものなら、一人でいることの心細さや孤独をぶつけ、すがってしまいそうだった。


情けない姿は見せられなかった。


彼女に対する澱んだ恋心をしまいこんでおきたかった。
姉のように慕い、弟のように可愛がられた関係に距離を置きたかったのもまた事実だった。


そんなことを繰り返しているうちに彼女からの連絡は徐々に減っていき、ついには途絶えた。


当たり前だと自分をせせら笑った。


諦め切れなくて毎日メールをチェックしたり、郵便受けを覗いたりしていた。
留守電のランプがついている日は深呼吸してからボタンを押した。
心が躍るのはいつも一瞬のことだった。
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