初恋 ~キミが僕に残したもの~
僕はまた、あの日のことを思い出す。


あの時、彼女の手を払いのけたことを後悔している。

あの時、きちんとその手をとっていたならば、こんなことにはなっていなかったのではないのかと――


彼女を想えば想うほど、彼女のことを考えれば考えるほど、嫉妬の炎で胸を焼き、身悶えるほどに熱い想いを持て余し続ける。

こんなことならいっそ、彼女のことを心から消し去ってしまえばいいのに、それができない。ぼくの中で循環する想いは毒されている。



そして、目の前の現実はとても残酷で――



目の前で誓いの口づけを交わす二人を見て、身を引き裂かれ、僕の中の彼女が、その世界が色を失っていく。目に見えない抗いがたい圧倒的な力に心が押しつぶされていく。


受け止めなくてはいけない現実と、それを拒否し続ける心の狭間に現実の(リアルな)僕がいる。



そして誰に言うでもなく、僕の口から「ダメ押しだ」と言う言葉が漏れ、情けない笑みが頬の肉を押し上げた。
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