初恋 ~キミが僕に残したもの~
「誠一郎(せいいちろう)、いつまで寝ているつもりなの! 今日は夢美(ゆめみ)ちゃんの結婚式なんだから、早く支度しなさいよ!」

目覚ましを消したと思っていたら、間髪入れずに声が降ってきた。


――やっぱり無理か。


布団の中で苦笑する。
寝過ごしてやり過ごそうなんてバカげた行為に、愚かな男の内側を見る。

仕方なく起き上がる。
訪問着に着替えた母親が仁王立ちして僕を見下ろしていた。


「忙しいのは分かるけど、一日ぐらいどうにかなったんじゃないのかい?」

「仕方ないだろう。教授に無理言って日本(こっち)に帰らせてもらったんだ。
式に顔出せるだけでも幸運(ラッキー)だって」

「おまえねぇ、夢美ちゃんの結婚式だよ、夢美ちゃんの! 
あんたにとっちゃ実の姉みたいなもんだろうに……」


「わかってるよ、そんなこと!」


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