初恋 ~キミが僕に残したもの~
彼女の名前を強調されて、また、言われたくない一言を添えられて、思わず声が荒ぶってしまった。

僕にとってそれは一番聞きたくない台詞だった。
今日という日はなおさらだ。

母は押し黙り、静かに部屋を出て行った。


僕だって分ってはいるのだ。
本当はどうしなければならないか。


だが、それがどうしてもできないこともまた、事実だった。


彼女が他の男の隣で、多くの人に祝福され、幸せそうに笑う。


その姿をどうやったら平気な顔で見ることができると言うのか――そんな方法があるのなら、式だろうと、披露宴だろうと構わずに出てやる。
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