初恋 ~キミが僕に残したもの~
僕はベッドから立ち上がり、レースのカーテンの隙間からそっと窓の外を見下ろした。


彼女の家の玄関が見えた。
タクシーが止まっている。
そこに向って彼女がゆっくりと歩いていた。


のどが鳴る。
そして、手が伸びる。


――行くな! 行くな、夢美ちゃん!


声にならない叫び声が口を突く。

すると、彼女がふっとこちらを振り返った。
瞬間、僕と目が合う。

僕は途端に、カーテンの陰に身を隠した。

胸が早鐘を打っていた。
久しぶりに見た彼女の姿はどこか儚げだった。


――夢美ちゃん。


壁に頭を預けて目をぎゅっとつむった。
しばらくして車のエンジンの遠ざかる音がした。

僕はもう一度カーテンの隙間から階下を見下ろした。


そこにはもう、タクシーも、彼女の姿も消えてなくなっていた。
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