空の神衣
 ミシェルは己が腕を見て驚愕する。

 独楽と思ったのは、飾り布を纏った晶だったのだ。

「くっ、独楽に化けていたのかっ!」

 振り払おうとするが、晶は肘を捉えて組み付いている。

「これぞミラクル・シーツや!」

 ビチイイィィィ…

 ミシェルの右腕が悲鳴をあげる。

 利き手ではないとはいえ、このまま締められていては深刻なダメージを受ける。

 その時、ミシェルはある事に気付いた。

「!そうか、君の装備はそのガントレットか!」

 晶はミシェルの腕を締めあげながら答える。

「ご名答!ウチは格闘家なんや。スピナーはあくまでサポートツール言うことやな」

 だが、分かったところで状況は好転しない。

「降参してほしいとこやけど、腹決めて戦うとるんやろ?ウチも負けるわけにはいかん。マジでいかしてもらうで」

 さらに締めあげようとすると、エトワールの刀身から微かに振動音が聞こえる。

『なんや?奥の手出してくる気やろか?』

 アルゴスに意見を求めるが、困惑しているのは同じのようだ。

『分からない。だけど戸惑っている余裕なんかないよ』

 危険なのは晶も同じである。

 独楽に化けて回転していたために、三半器官の機能が麻痺している。

 視界が歪み、思うようにならない体で、必死にミシェルの腕にしがみついているのだ。
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