空の神衣
(片腕を捨てた今の一撃で、決められないか…)

 利き手でこそないが、骨を折られた激痛に意識を奪われる。

「もう、あまり長くは戦えそうにないな。大技は次で最後だ」

 エトワールを突き出すミシェルに、膝をついたまま晶は尋ねる。

「なあ、おっちゃんの願いて何なんや」

 晶の問いに、ミシェルは一瞬目を伏せる。

「…復興の、ためだよ」

「復興?…あ、ひょっとして、シャルマンて没落貴族なんか」

 話しながら、晶は独楽をミシェルの背後に誘導する。

「衰退した家督の歴史を書き直すために、戦うとるんやな」

「…そうだ。シャルマン家は今も続いているが、このまま行けば絶えてしまうだろう。私にはそれが耐えがたい」

 体が傷つきながらも、ミシェルの目は信念の光を失っていない。

『彼は動ける限り、戦いをやめないだろうね』

 アルゴスの言葉に、晶はやりきれない思いを口にする。

「腹くくっとるんは分からんでもない。けど、過ぎた時間巻き戻すために流れる血は未来のためのモンやないんか?」
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