空の神衣
 晶は泣いていた。

 構えたまま、ミシェルを責める。

「一家の将来を心配するんやったら、後継者育てるべきやないんか。何で命の削り合いしてまで、おっちゃんが復興なんかせないかんの?」

 傷つけずに済むなどとは、始めから思っていない。

 だから、本気でミシェルの腕を折ったのだ。

だが、殺すつもりもないし殺されたくもない。

「ウチにも負けられん理由はある。あるけど、他人の命踏みにじってええ道理がどこにあるんよ」

 ミシェルも構えたまま答える。

「分かっている。私がしていることは間違っている。だが、どれほどの遺恨と引き替えにしてでも叶えたい願いがある」

「どんな願いでも!」

 晶は納得できない。

「老いては子に従え言う言葉あるやん。未来は若い世代が作るもんや」

 言いながら、晶はもう分かっていた。

 ミシェルにはどんな言葉も届かない。

『殺していい理由なんてないけど、ミシェルは未来を捨てているよ』

『やっぱり、か。やらなあかんのかな』

 簡単に決断できることではない。

 だが、対峙した晶には目をそらすことはできない。

 それはミシェルの魂に対する冒督だ。
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