空の神衣
「おっちゃん」

 晶は涙を拭う。

「なんだね」

 ミシェルの目も潤んでいる。

「おっちゃんの血迷った願いが、成人もしてない娘にごっつい十字架背負わせとるんやで」

 迷いは、まだある。

「せやけど、ウチはここから逃げるわけにはいかへん。自分の覚悟にウソつきたないから」

 今逃げたら、蒼馬を追う資格はなくなる。

 それだけはできない。

「壇上に上がった者として、ウチには決着つける責任がある。おっちゃんが満足できるかは分からんけど」

 ミシェルは一つ頷く。

「すまんな。年寄りの我儘に付き合わせて」

 それ以上、語る事などなかった。

 ミシェルには、もとより迷いなどない。

 晶も覚悟を決めた。

「いくつか、考えとる技がある。できるかどうか分からんけど。おっちゃんの餞になるかな」

 迷いの晴れた面持ちで晶は言った。
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