空の神衣
「ほう、どんな技かな」

 エトワールを深く引き込み、ミシェルは最後の攻撃に備える。

「それは秘密や。使たことないから、うまくいくかは自信ないし」

 晶はマニアと言ってもいい格闘好きで、様々な技を考えては実践している。

 だが、そうした技の中には、考えはしたものの使ったことがない、あるいは使えなかった技がいくつかある。

 なにせ、技を考える時には人間の運動限界など度外視している。

 だから。

 人間を凌駕する運動能力があれば、不可能な技も可能になるかも知れない。

 アルゴスと契約した時にそう思った。

「いけるかどうかは、実際やってみな分からん。せやけど、おっちゃんに失望はさせへんよ」

 もし決まれば、本当にミシェルを殺してしまうかも知れない。

 だが、それを理由に戦いから逃げるつもりも、ない。

「私も、残った力で最後の攻撃をしかける。受けてくれるかね」

「当たれば、な」

 晶が手を振ると、跳ね上がった独楽が左右の壁に着地する。

 同時に、晶は後方に大きく跳んで距離を取る。

 その様子を、ミシェルはじっと見ている。

 限界が近い体で、無駄な小手技は出さない。

 ミシェルは晶の目に注目している。

 攻撃に移る瞬間、晶は一瞬だが白眼になる。

 戦いの中でそれに気付いたミシェルは、乾坤一擲のタイミングを見極めようとしていた。
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