空の神衣
 ルイは高校の時から、李苑のことをりんりんと呼び仲が良かった。

 男子が李苑を泣かせでもしようものなら烈火の如く怒り、相手が泣いて謝るまで絞めあげた。

 言うまでもなく、蒼馬も餌食になった。

「まあぁぁた、りんりんを泣かせたなあぁぁっ!かあぁぁくごおぉっ!」

 喉が潰るのではないかと思うほど声を張り上げながら、ルイは迫って来る…のだが、足元が砂なので一向に距離が縮まらない。

『あやつは何故、あそこから攻撃してこんのじゃろうな』

 不思議そうに言う太刀風に、蒼馬は呆れ顔で答える。

「ここまで来て一言言わなきゃ気がすまないんだよ。あいつはそういう性格なんだ」

 向こう脛あたりまで砂にめり込む足を引き抜いてはまた埋まり、また引き抜いてルイは近付いて来る。

 少しずつ。

 少しずつ。

「…あ…」

 蒼馬はあることに気付いた。

『どうした?』

「あいつの装備、白兵戦用なんじゃあ…」

『なるほどな。眼前まで寄せて来んことには、儂らを攻撃する手段がないわけじゃな』
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