空の神衣
「契約もしてないツールが一人歩きしてる?そんな事例、見たことも聞いたこともないわ」

 そう言われても、津也とて事態が理解できていない。

「どうなってるんだろうねえ。まあとにかく、準備しとこうぜ」

「うん。じゃ、珠に触って集中して」

 津也が珠に触れると、闇珠の姿が靄のように霞んでいく。

『同調する瞬間、のしかかられるような重圧があるわ。額に力を集めて』

 言われた通り、津也は額に力が集まるように意識を集中する。

 やがて闇珠の姿は津也に溶け込むように消え、残ったリボンと珠が右手に巻き付く。

 同時に、津也は押し潰されそうな感覚に襲われる。

「う…むうっ…」

 思わず顔をしかめる。

『う…くう…』

 津也の意識に、闇珠の苦しげな声が響く。

『闇珠、どうした』

『津也の心…深くて…暗い…引っ張られる…』

 津也の意識の中で、闇珠はどこまでも落ちていく感覚にとらわれる。

 その深い意識の奥に、少女が佇んでいた。

『やはり君が来たか。久しぶりだね、オーブ』

 微笑む少女に、闇珠は見覚えがあった。

『あなた、カードね』

『そうだよ。私は戦士に取り込まれて、ここで今まで眠っていたんだ』
< 132 / 264 >

この作品をシェア

pagetop