空の神衣
 自分の意識の中で起きていることなど知らず、津也は呼び掛けに応えない闇珠が気掛かりでならなかった。

(どうしたんだ、一体…同調がうまくいってないのか?)

 そこへ、ようやく闇珠の声。

『お待たせ~。ちょっと手間取ったけと、同調完了』

『お前なあ、返事くらいしろよ』

 闇珠の呑気な声に安堵しながら、津也はぶつぶつぼやく。

『まあまあ、細かいことは気にしない。どうやら戦況は動いてないみたいね』

 闇珠と影縫の遭遇は、刹那の出来事だったようだ。

『津也の言った通りね。砂の中で力がわだかまっているのが分かるわ』

 同調によって五感を共有している闇珠には、津也の言う力の波動が見てとれた。

『今回は手助けだけだ。まあ一人くらいは落ちるかも知れんな』

『どうせいつか戦う相手よ。あまり情けをかけすぎないで』

『分かってるよ』

 短いやりとりの後、津也の右手に巻き付いたリボンが鉄甲に変わり、両腰にリボルバーとオートマチックのハンドガンが現れる。

 津也は右腰のオートマチックを抜き、頭上に掲げる。

『サテライトショットでいこう。跳弾させれば、ここから撃ってるとは気付かれんだろう』

『おっけ~。ディフレクターは3つくらいかな』

 鉄甲の珠から黒いオーラがほとばしり、虚空に消える。

 その間も津也は戦場から目を離していないが、大きな変化はない。

「こいつは、長期戦になりそうだな」
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