空の神衣
 ただ淡々と語る津也の声が、李苑には感情を押し殺しているように聞こえた。

 しかし、平静を失っている李苑はすぐにその違和感を失念してしまう。

「るんるんは弱いから死んだとでも言うの?そんな事考えてる人が戦いを終わらせたいなんてお笑い草だわ!」

 李苑が錫杖を大きく振ると、津也の足元が凍りついた。

「綺麗事並べるつもりはないけど、助けられる命を見捨てたあなたは許せない!」

 更に打撃を加えようとするが、津也は上体の捻りだけで尽くかわしてしまう。

「どうして?どうして当たらないの」

 闇雲に錫杖を振り回す李苑。

 しかし、狙いも定まっていないのでは当たるわけもない。

「李苑…思い違いも大概にしとけよ」

 責め手が止んだと見るや、津也は脚に意識を集中して力を込める。

「哈っ!」

 パアアァァンッ!

 気合一声、氷を蹴り破る。

「契約した時に、覚悟を決めたんじゃなかったのか。もしルイと戦うことになってたら、そんな寝言言えたか」
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