空の神衣
 錫杖を構え、津也を見据える。

「津也、私の戦いを終わらせて」

「いいんだな」

 津也の言葉に頷くと、李苑は錫杖を頭上に投げ上げる。

「ルシフェルも、いいって言ってる」

 憑き物が落ちたかのような、晴れやかな顔で李苑は両手を開く。

 弧を描いて飛来する錫杖を受け取り、津也は李苑に迫る。

 狙いは、腰に巻いたベルト。

「せいいぃぃっ!」

 気合い一閃、白滋のベルトを打ち砕く。

 パキイィィン…

 澄んだ音を残して、錫杖も砕け散る。

「まったく、世話焼かせやがって」

 振り抜いた体勢のままで、津也は呟く。

「李苑の戦わない覚悟、確かに受け取った」

 やがて、空間に星空が戻って来る。

「李苑が力を失ったために、封鎖されていた空間が元に戻ったんだ」

 アリアスが李苑の肩に手を添える。

「我々は、ここでリタイヤだ」

 暗がりの中、津也は二人に背を向けて手を振りながら立ち去る。

「後は、まあ見てろや」





紫乃原李苑

アリアス・シュールストロム



脱落
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