空の神衣
「蒼馬が?」

 津也が少し驚いて見やると、晶が頷く。

「ウチが見たんは、蒼馬が吹っ飛ばされてズダボロなったとこだけなんやけど」

「ふうん…蒼馬もやられたか…」

 さすがに、津也もそこまでは予想していなかった。

 幾度となく戦って来たであろうシオンに対し、津也は実質サバイバーとしての戦いをまだ一度しか経験していない。

 力量はともかく、場数の隔たりは大きく広がったことになる。

「あの時でさえ勝てる自信なんかなかったのに、さらに手強くなったってのかよ…」

 固い表情で腕組みをする津也に、晶がボウルを差し出す。

「後、任せた。もう腕限界や」

 さばけた顔で言う。

「今更、後には引けへんで。もう津兄ぃ一人の戦いやないんや」

「分かってるよ」

 溜め息をつき、津也は生地をこねる。

「こんなもんでいいか。闇珠、チョコ」

「は~い。ちょっと多いかな?」

 チョコを生地に混ぜ、さらにこねる。

「シオンが厳しい相手であることは事実だ。慎重にもなるさ」

 ゲームではない。

 命を賭けた戦いだ。

 勝算なくして、踏み切れるものでなはい。

「スピードなら、俺に分がある。間合いを守れるかどうかだな」

 広げた生地を型抜きしながら、津也は誰に聞かせるでもなく言う。

 言葉を口に出したほうが、考えをまとめやすいのだ。
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