空の神衣
「射程に制限はないんだし、遠距離から撃てば問題ないでしょ」

 オーブンのドアを開けながら闇珠が言うと、津也は首を振る。

「そこまで、距離取らせてくれる相手じゃない。鼻先ギリギリの白兵戦になるだろうな」

 純粋に剣と銃を比較すれば、射程距離の差は明らかだ。

 加えて、サバイバーの武器ともなれば弾は重力にも空気抵抗にも阻まれることはない。

 だが、シオンはそれだけの間合いを取らせてはくれないだろう。

 抜いた残りの生地を千切って小玉にする。

「後は待つだけ、と」

 ポンとひとつ柏手を打ち、津也は台所を出て行く。

「ちょっと疲れたな。仮眠とるから、焼けたら起こしに来てくれ」

 そんな津也の背中を見送りながら、闇珠がぽつりとつぶやく。

「ほんと、見栄っぱりなんだから」

「相当、無理しとるわ」

 晶も頷く。

「大丈夫なんて言ってたけど、津也は自分で思ってる以上に繊細だから、あの戦いからずっと心を痛めているはずよ」

 闇珠の表情も、暗く沈んでいる。

「ウチには何も出来ることないし、津兄ぃのこと頼むで」

 闇珠の頭を撫でて晶は言う。

「時間に任せるしかないこともあるやろけど、津兄ぃがこの先戦えるかどうかは闇珠にかかっとるんや」
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