空の神衣
「分かってる。だけど、どうしたらいいの?津也は今でも、私に本心を隠してる。抱えた痛みを、見せてくれないの」

 闇珠は泣きそうな顔で言う。

「確かにな、津兄ぃは心に壁を作っとる。理由はわからんけど」

 晶は、不用意に闇珠を抱き締めたりはしない。

 ただ、その目を見据えて答える。

「津兄ぃの心に入って、闇珠は何かを見たんやないか?壁の向こうに手を伸ばせるんは、闇珠だけなんよ」

 自分には何もできないもどかしさを感じつつ、晶は闇珠に決断を委ねるしかない。

「ごめんな。ウチには、どないしようもない。最後には津兄ぃが乗り越えるしかないし、助けられるんは闇珠だけなんや」

「分からない…人間の心なんて分からない」

 闇珠は両手で顔を覆って塞ぎ込む。

「私は武器なのよ。人間の悩みなんて、分かるわけないじゃない!」

 思わず声を上げる闇珠の頭を、晶は津也がしたようにパタパタとはたいてやる。

「あ~あ、粉だらけ」

「晶…」

「人間の心か。そんなもん、ウチにも分からん。闇珠に分かるわけ、あるかい」

 人差し指を立てて晶は続ける。

「自分のことかて全部は分からん。大事なんは、分かろうとすること。受け入れることや」

「受け入れる…?」

「そう。津兄ぃを、壁ごと受け入れられるんは、闇珠だけやろな」
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