空の神衣
「壁ごと…」

 闇珠は晶の顔を見る。

 晶が何を言いたいのかはよく分からない。

 だが、確かに晶にはどうしようもないことだ。

「津也の心…深い霧みたいだった…」

 闇珠はぽつりと呟く。

「霧?」

「うん。拒絶してはいないけど、何も見えない」

 津也と同調した時、闇珠は霧の中をさまようような感覚にとらわれた。

 闇珠は契約者と同調した時、その心理を視角で捉えることができる。

 だが津也と同調した時に見えたのは、吹き溜まりのような暗闇だけだった。

 辺りを探ってみようとしても、手応えはない。

 そうこうしるうちに影縫の思念に引き寄せられたために、津也の心理については全く分からないままだったのだ。

 過去に何度も契約してきた闇珠だが、相手の心が見えなかったのは初めてだ。

「そんな津也の心、少しでも見えるようになるのかな…」
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