空の神衣
『君に消えてほしくないからだよ。…正直、自分がわからない』

 影縫の声は消え入りそうなほどか細い。

『契約者の精気を奪い、強くなることは喜ばしいことのはず。…今の私はそれを望んでいない』

 かすれる声に津也が問い返そうとした時、シオンの叱声が飛ぶ。

「何をしているのです!あなたはアルベルトを倒して、私と戦うのではなかったのですか?しっかりなさい、シンヤ!」

 その声に、津也は我に返る。

『話は後だ。今は戦うことに集中してくれ』

『…わかった…』

 津也は思考を切り替えたが、影縫の心は淀んだままだ。

 身構えた津也は、すぐにその異変に気付いた。

「装甲が…霞んでる?」

 手足を覆う装甲が、消えかけているのだ。

「何だよ、どうなってるんだ」

 うろたえて影縫に問いかけるが、答える声はない。

 その間にも、アルベルトのムチは津也を襲う。
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