空の神衣
「俺が闇になるって、どういうことだ」

 津也の瞳が、禍々しい熱を帯びる。

「俺を戦わせに来たお前が、なぜそんな事を言うんだ」

 怒りとも、憎しみともつかない。

 どす黒い感情が津也の心を支配する。

「だめ!」

 闇珠は声をあげ、津也に飛びつこうとする。

「グウアァァッ!」

 声にならない叫びと共に、津也は闇珠の首を掴み上げる。

「あくうぅぅっ!」

 力任せに首を絞められて闇珠は苦悶の声をあげる。

 いかに人の姿が幻体とはいえ、闇珠にとっては
自分の一部だ。

 闇珠が痛いと思えば痛覚が生まれる。

「う…くっ…」

 混濁しそうになる中、闇珠は津也の意識に強制侵入する。

 サバイバーと同調できない時、ツールは一方的に侵入してその体を支配することができる。

 なぜか津也はその干渉を無効化できるのだが、精神の暗黒面が発現している今なら入れるのではないか。

 闇珠はそう考えた。

 果たして、闇珠の思念は津也の意識に入り込んでいた。

(津也、あなたの心を私に見せて!)

 闇珠が見たのは、渦巻く黒い霧の中で揺らぐ淡い光だった。

《…るな…》

 か細い声が、聞こえた気がした。
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