空の神衣
 闇珠は津也の意図を察した。

 生を得ようとする主催者を、津也は自分が死の極限に立つことで打ち消そうとしているのだ。

 そのために解放した負の感情が闇となって、歯止めが効かないほど増大してしまったようだ。

「津也、このまま心が闇に染まってしまったら、あなたは破壊の権化になるわ。戦うどころではなくなるのよ」

 嘘だ。

 闇珠は自分が嘘をついていることに、今更ながら驚いていた。

 津也の精神構造は特殊だ。

 心を闇に閉ざされながら、自我を保っている。

 恐らく、心が完全に闇に染まることはない。

 いやむしろ闇珠にとっては、津也が暴走することは歓迎すべき事だ。

 だが、そんな事はどうでもよかった。

 闇珠はただ津也を引き止めたかっただけだ。

 精神の崩壊は、闇珠にとっては存在の消失だ。

 つまり、津也が暴走するような事態が万一にでも起きれば、それは津也を失う事に他ならない。

「あなたがいなくなったら、私は私でいられなくなる。お願い津也、私を置いていかないで」
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