空の神衣
 意識が覚醒すると、闇珠は津也に押し倒されていた。

「う…く…」

 同時に感覚も戻り、襟を掴まれているため息苦しくなる。

 やや遅れて、津也も正気に戻る。

「あ…」

 体勢に気付き、津也は手を離す。

 何がどうなったのか、闇珠の服はあちこち破れている。

 慌てて体を起こす津也の腕を取り、闇珠は満面に笑みを浮かべる。

「もう、今度こそ本当に大丈夫みたいね」

 津也は闇珠と目を合わせられず、気まずそうに手を見る。

「何とかな…今は大丈夫だよ」

 眩暈を起こして動けない津也を、闇珠が玄関でしたように抱き締める。

「無理しないの。そろそろクッキーが焼き上がる頃合いよ」

 愛しそうに、闇珠は津也の頭を撫でる。

 津也はされるままに撫でられている。

「闇珠…また背丈伸びてないか?」

 闇珠の答えは、先刻とは少し違った。

「…私が、そう望んでいるからかもしれない」

「闇珠が?」

「そう。私は今、人間になりたいと思ってる」
< 195 / 264 >

この作品をシェア

pagetop