空の神衣
 それ自体は事実だ。

 闇珠が戦闘力をフルに発揮するためには、契約者である津也が願いをかけなくてはならない。

 だが、今の闇珠にとっては、そんな事情は言い訳でしかない。

 自分は津也と戦うためにここにいる。

 勝敗に関わらず、その先のことなど考える必要はないはずだ。

 そもそも、戦いが決着した時点でツールは主催者のもとに戻る。

 その後のことなど、どうでもいいことだ。

 むしろ、今は考えたくない。

 闇珠の思いは一つ。

 津也と離れたくない。

 結末は決まっているのだから、闇珠の思いがいかに強いかろうと無駄な足掻きでしかない。

 それでも、闇珠は津也の側にいたいのだ。

 蓄積された知識から、闇珠はその感情を人間が『愛』と呼ぶことを知っている。

 自分には必要ないはずのその感情が、なぜか自然に受け入れられた。
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