空の神衣
「レディは、何を着ても似合うのよ」

 胸を張る闇珠に、晶は人指し指を立てて言う。

「何言うとんねん。ウチの見立てがあってこそやないの」

 声をあげて笑い合う二人を、津也は目を細めて見る。

 すぐに厳しい戦いが始まることは、晶も分かっている。

 その上で緊張をほぐそうと、ふざけて見せてくれているのだ。

 闇珠も晶とは馬が合うようで、まるで傍目には姉妹に見える。

 やるべき事が決まっているからこそ、休息が大きな意味を持つ。

 今は、休む時だ。

 食事の間も、和やかな空気が満ちていた。

 やがて片付けも済ませると、津也は部屋に向かう。

「さて、そろそろ寝ようかな」

 時刻は8時。

 津也が宵っぱりなことを別にしても、寝るには早すぎる。

「津兄ぃ、風呂入らなあかんよ」

 闇珠とジェンガをしていた晶が、振り向いて声をかける。

「身のたしなみは、きちんとせんとな」

 津也が早々と寝ると言い出した意味を、晶は敏感に悟ったのだ。

 いよいよ、戦いに行くのだと。

「ウチ、留守番しとくしな。お土産よろしく」

 選んだ棒をそろそろと引き抜きながら、何でもないことのように言う。

「分かってるよ。あんまり散らかさないでくれよな」

 津也もまた、待ち受ける戦いのことなどおくびにも出さず答えて背中を向ける。

「こんな時にできることがない言うんは、もどかしいもんやな」

 抜き取った棒を握り締めて晶は呟く。
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