空の神衣
 翌朝早く、津也と闇珠は晶に見送られて家を出る。

 津也はいつも通りの垢抜けない服装。

 闇珠も、初めて津也と会った時と同じ詰め襟にドレスコート。

 手頃な開けた場所を見つけると、空間を封鎖して待つ。

ややあって、赤いドレスの貴婦人が姿を見せる。

「待たせたな」

 津也が声をかけると、シオンは意外な問いかけをした。

「本当に、よろしいんですの?」

「なに?」

 思ってもみない言葉に津也がいぶかしげな顔になる。

「覚悟を決めて来たのは分かりますわ。でも、あなたは勝っても負けても大きな損失を被ることになる。パートナーとも、会えなくなるのよ」

 シオンは言いながら、イーフリートのカードを取り出す。

「まだ間に合う。ここでリタイヤすれば平穏な日常に…」

「それはできない」

 シオンの言葉を遮り、津也は闇珠の珠に手をかざす。

「あんたの挑戦を受けると決めた時、既に後戻りはできなくなってたんだよ」

 一陣の黒い風が巻き起こり、同調が完了する。

「挑戦を受けるということは、あんたの未来を奪うことだからな」

 両腰のホルスターから銃を抜き、臨戦態勢をとる。

 その津也の姿を見て、苦笑しながらシオンも武装する。
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