空の神衣
「あなたという人は、どこまでも期待を裏切ってくれますわね」

 シオンが掲げる剣が、炎に包まれる。

 その炎が、赤から青に変わる。

「初めはただ単に倒すべき敵の一人だったのに、普通に出会えたらよかったと思わずにいられませんわ」

 目を細めて構える。

「そう言うわりには、思いきり本気じゃないか」

 呟くように言うと、津也も撃鉄を起こす。

「厄介な事に巻き込んでくれたもんだと、初めは恨みに思ったもんさ」

 力を抜いて構えてはいるが、津也はこの体勢からどの方向へも狙いをつけられる。

「一度挑戦を受けちまった以上、本気で戦うのが礼儀だろう」

 その瞳に決意を宿し、津也は毅然とシオンを見据える。

「ボクサーなら、グローブを合わせるところなんだろうがな」

 右手のリボルバーを頭上に差し上げる。

「始めましょうか」

「ああ」

 それで十分だった。

『闇珠、ディフレクター広域展開』

『OK。コンシールで隠蔽するね』

 力弾を歪曲させるディフレクターによって、津也はどんな体勢からでも自在に射撃ができる。

 無論背後からの攻撃もできるし、津也には正面攻撃にこだわるポリシーも余裕もない。
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