空の神衣
(くそ、まるでスッポンだな。ぴったり貼りついて距離を取らせてくれない)

 津也は心中で悪態をついていた。

 思念を具現化して撃ち出す銃に距離は関係ないのだが、近すぎると狙いがつけにくいのだ。

(重装甲なのに、なんであれだけ機敏に動けるんだろう…)

 シオンの鎧も物理法則を無視した存在であり、重さは関係ない。

 しかし、認識としての重さはある。

 シオンが鎧を心理で認識していれば、それなりの重さを感じているはずなのだ。

 もちろんシオンに鎧についての知識がなければ重さも感じないのだろうが、彼女の動きは鍛練を積んだ者のそれだ。

(鎧の重さは実感してるはずなのに、まるで羽が生えてるみたいだ)

 攻撃間合にまでは踏み込んでこないが、津也の動きが僅かにでも乱れれば確実に斬撃を受けるだろう。

 津也は今更ながら、シオンの強さに驚嘆させられていた。
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