空の神衣
 津也に肉薄していたシオンの動きが、不意に止まる。

「なんだ?何か仕掛けてくるつもりか」

 警戒する津也の眼前でシオンの鎧が弾けた。

「うわっ!」

 飛んできた鎧の破片が津也の足を止める。

 直後、熱気が吹き抜ける。

(これはシオンのイーフリート!さっきまでより速くなってる!)

 そのシオンの動きを、津也はとっさには捉えることができない。

 そんな動揺にもお構いなく、斬撃が空を灼く。

『なんなの?シオンの動きを追えない!』

 闇珠も、シオンを完全に見失っていた。

 そもそも、闇珠は視覚でシオンを捉えているわけではない。

 感情や思念を受信することで、存在を認識できるのである。

 その闇珠が見失うほどに、シオンの思念は流動していた。

 収縮した思念が驚異的な速さで躍動しているために、それまでの動きに慣れていた闇珠は遅れをとってしまったのだ。
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