空の神衣
 本来であれば、そんな認識のずれは起きない。

 だが、変調をきたしている闇珠の感覚は人間に近くなっているため、シオンの速さについていけなかったのだ。

『津也、ここはひとまず距離を取って…』

 言いかけて、闇珠は驚愕した。

 信じがたい機動力を発揮するシオンの斬撃を、津也は見切ってかわしたのだ。

『津也?』

『見えた!シオンは鎧の外装を捨てて勝負に出たんだ』

 それは分かっている。

 闇珠は自分に見えないものを視認できる津也から、覚えのある波長を感じた。

(津也は、もしや…)

 初めから感じていた異質な印象の正体が、闇珠は分かった気がした。

 確かめたいとも思ったが、強敵と対戦している時に余計なことを考えるべきではない。

 それにもし闇珠の推測が正しいなら、答えは戦いの中で明らかになるはずだ。

(だけど…もし当たっていたら、津也の未来は過酷なものになる…)

 やはり、気掛かりなものは気掛かりだ。
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