空の神衣
 かたや、シオンは焦っていた。

 津也を追い詰めるべく切札まで使いながら、それでも遅れを取っているのだ。

『運動速度はこちらが上回っています。彼の回避能力が尋常ではありません』

 イーフリートが分析を述べる。

 津也がシオンの攻撃をかわせるのは、卓越した観察眼と一瞬の身体能力のなせる技である。

『つまり、私の動きが見切られている?』

『そのようです』

 イーフリートの声は感情を一切含まない。

 しかし、シオンはその中に自分以上の焦りを感じていた。

 焦れば焦るほど、津也を捕えることはかなわない。

 分かってはいても、心が逸る。

 待ち望んだ対戦だからというだけではない。

 思ったより遥かに、津也の戦闘力が高いのだ。

 アルベルトとの戦いから推測した水準を、今の津也は遥かに越えているのだ。

(あの時とは比較にならないほど、強くなったということね)

 素養なのか、成長によるものか。

 いずれにせよ、津也の戦闘力はシオンを上回るレベルに達している。
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