空の神衣
 長期戦になれば、シオンが圧倒的に不利だ。

 剣を振るうのと銃の引金を引くのとでは、労力には雲泥の差がある。

 加えて、津也はまだ自分から仕掛けていない。

『イーフリート、あなたは私とシンヤのどちらが生き残るか、もう分かっているのではなくて?』

 弱気になったわけではないが、聞かずにはいられなかった。

 必殺の大技は予備動作が大きく当てるのは難しいし、津也も当然警戒しているだろう。

 兵法を修めているだけに、シオンは彼我の戦力差から展開が予想できてしまうのだ。

 勝算はないに等しい。

 津也の引き出しが、あといくつあるのか分からない。

 自分の引き出しは、あと一つしかない。

(ここまで強くなっていたとは、思わなかった)

 誤算以外の何物でもない。

 しかし不思議と、悔しくも悲しくもなかった。

『勝敗は、力量によってのみ決するものではありません』

 シオンの思いを知ってか知らずか、イーフリートは至極冷静に言う。

『マスターが勝利を欲するのであれば、私は力の限り補佐するまでです』
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