空の神衣
 それで十分だった。

 イーフリートは自分の意見を主張しない。

 ただ、シオンの要求に全力で応えるだけだ。

『イーフリート、私はここで全ての力を使いきってめも構わない。この手に、ただひとたびの勝利を』

『御意のままに』

 シオンの意思にイーフリートが応え、炎が爆発的に吹き上がる。

 やがて炎は収束し、シオンの頭にサークレットが現れる。

『次の攻撃に全ての力を注ぎ込みます。勝敗に関わらず、マスターは命を落とすでしょう』

『構いませんわ』

 もとより、既に死んだはずの身である。

 己が身の末路など恐れる理由があろうはずもない。

 そこまでしなければ津也を倒せないと認めたからこそ、イーフリートも苦渋の決断をしたのだ。

 契約者の命を危険にさらすことは、イーフリートにとっては不本意極まりない。

 屈辱とも言えるその決断を下したのは、シオンと共に勝利をおさめるためだ。

 シオンは必殺の一撃に賭けるべく、津也から距離をとる。

(願いを叶えるよりも、ただ一度の勝利の方が貴い価値がある)
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