空の神衣
(破滅が待っているのは津也の方かも知れない)

 勝敗よりも、その後の方が闇珠は気掛かりだった。

 もし推察が当たっているなら、戦い続けていれば津也は自らの闇に飲まれてしまう。

 それで津也が自我を失うことはないだろうが、世界から逸脱した存在になることは間違いない。

(それでは、もう生きているとは言えない)

 そうなってしまえば、津也の願いが何であろうと叶えることはできなくなる。

 だが、津也は自分が異形化することを恐れてはいない。

 まるで、自分が持つ異質な因子の正体を知っているかのように。

『一発で、確実にシオンの動きを止める。ギリギリまで引きつけるぞ』

『うん…』

 津也の判断は的確ではあるが、闇珠の危惧を掻き立てるものでもある。

 だが、ここで戦いを止めることなどできるはずもない。

 闇珠の苦悩をよそに、津也はシオンの炎が絡み付く中心を見極める。
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