空の神衣
 弾かれたように顔を上げると、津也のオートマチックから煙が立ち上っている。

 火薬を使うわけではないので、実際には煙など出てはいない。

 だが、シオンには銃口から揺らめく硝煙が確かに見えた。

「…まさか、これほどまでに…」

 命がけの攻撃さえ通じないほど、津也は力をつけていたのか。

 絶望的な壁を見せつけられたようで、シオンは激しい脱力感に襲われていた。

「もっと際どい戦いになると思ったんだけどな」

 津也はリボルバーの撃鉄を起こす。

「これでも、シオンと戦うために色々作戦考えてきたんだぜ」

 シオンに銃口を向ける津也は、複雑な表情を浮かべていた。

「成り行きとはいえ、関わった責任もあるわけだからな。無様な戦いはできないし」

 呆然とするシオンに、頭上から無数の力弾が降り注ぐ。

「あうああぁぁぁっ!」

 闇の礫に全身を撃ち貫かれ、シオンはたまらず声をあげる。

 シオンの命そのものである炎を、津也の闇が食い荒らしているのだ。

 体の痛みを忘れたシオンだが、魂を撃ち抜かれる激痛は耐えがたいものだった。

 一発の威力は微々たるものだが、それが際限なく続くのだ。

 十分なコンディションなら、鋼雨陣の効果が圏外まで離脱することもできただろう。

 だが、乾坤一擲の剣をも繰り出してしまった今のシオンは立つこともできない。
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