空の神衣
 アガートラームと戦うためには、闇珠の力を完全解放する必要がある。

 願いによって契約を成立させるなら、今しかない。

『これが最後の戦いになるわ。あなたの願いを聞かせて』

『分かった』

 迷うことなど、なかったのかもしれない。

 忌まわしいだけの戦いなら、津也は闇珠とは契約しなかっただろう。

 津也が終わらせたいのは不毛な争いであって、戦いそのものではないのだ。

 津也は常々あることを考えていた。

 今の時代、人が誇りを賭ける機会がどれほどあるだろう。

 持てる能力を限界まで発揮できる局面がどれほどあるだろう。

 主催者の私利私欲という束縛さえなければ、こうした戦いはあっていいのではないか。

 ならば、光の元でどんな戦いが繰り広げられるのだろう。

 その未来を、見てみたい。

『俺は、戦いの未来を見届けたい』

『それが、願いなの』

『そうだ。できたら、闇珠にも見届けてもらいたいんだけど』

『それは…できない相談だわ』

 津也の言葉に、闇珠は苦笑する。

『決着がついた時点で、契約は終了する。私は叶えるために願いを聞いてるわけじゃないわ』

『それに、戦いが終わる頃には闇珠は人間になってるだろうしな』

 津也はいつものように平然と言う。
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