空の神衣
『闇珠は人間になって、俺が生きてきた世界を生きるんだ。限りある時間の中で』

 津也が戦いの行く末を見届けるには、封鎖空間に居続ける必要がある。

 主催者を放置すれば、また欲にかられて不毛な争いを引き起こすかも知れない。

 津也はここから出るわけにはいかないのだ。

 それは、闇珠との別離を意味する。

 闇珠が人間になってしまえば、封鎖空間に存在することはできないからだ。

『それで津也に会えなくなるなら、聞き入れたくはないわ』

 それは、闇珠の偽りない本心である。

 だが、津也の決意に水を差すことはできない。

 例え、結果として津也が孤独になろうとも。

『津也、いざという時はあのカードを使って』

『影縫のカードか』

 津也は胸ポケットに入れたカードのことを思い出す。

『そのカードには、最後に使うための力を込めてあるわ。ここと思ったら迷わず使って』

『分かった』
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